2016年08月08日

近代協・山上春美理事長に聞く 行政回収古紙の高値入札問題

近代協・山上春美理事長h28.7.28.JPG 大阪再生資源業界近代化協議会・山上春美理事長(山上紙業会長)に行政回収による古紙の高値入札の問題を指摘して貰った。
 古紙の回収は一般の家庭や事業所から発生するものを集団回収など専門の古紙業者を通じて行われるものと、行政が主体となり一般廃棄物(ごみ)から分別して回収される行政回収がある。行政回収といっても実際の回収業務を行政が直接行うわけではなく、専門の古紙業者に委託する。
 行政回収で集められた古紙は行政によって入札が行われ、これに古紙業者が応札する。そこで落札される価格が常識外れの超高値となり、通常の価格体系による安定した回収システムを不安定にし、脅かす一因になっている。
 行政の高値入札問題の背景として、まず古紙の発生減が挙げられる。近年のデジタル化や少子高齢化の進展で、紙・板紙の生産量は2007年のピーク、3127万㌧から昨年の2622万㌧まで約500万㌧減少した。
 それに伴い、古紙の回収量はピークの2332万㌧から昨年の2140万㌧まで200万㌧近く減少している。製紙工場に古紙を納入している古紙業者は、メーカーから受けた古紙の注文に数量や納入期日の点で間に合わない場合、高値の行政回収品に手を出してしまうことは想像に難くない。
 山上氏によると、「今年度、東大阪市の行政回収の入札価格は、新聞、雑誌、段ボール突っ込みで1㌔あたり16円30銭。これは直納業者が集めて、ベーラー化工し、製紙原料として仕分けたものを手形販売したものだが、そんな高値では絶対落札できない」「大阪市でも1㌔23円とか40円など滅茶苦茶高い価格で落札されている」という。
 応札するのは古紙業者だが、これだけの高値で購入されたものが、製紙原料としてメーカーに納入できる訳がない。つまり、ビジネスとして成り立たない価格で売買されているわけである。山上氏はそこに行政回収される古紙の数量や重量のごまかしがあると見ている。
 また、行政回収の実際業務を専門の古紙業者に委託する際の委託費は逆に極めて安い。各市町村が環境省の定める一般廃棄物処理基本計画に基づいて行政回収を行う場合、「ひたすら競争原理ばかりに委ねるべきではない。適正な設備能力を有する業者に委託し、その業が成り立つだけの料金を支払わなければならない」としている。
 しかし、行政は各市町村が直接回収した場合の膨大な費用(古紙業者が回収する場合の約10倍)に比べると、古紙業者の入札価格は安いという見方をして、例えば1㌔16円50銭といった高値で落札させている。
 大阪府下では平成4年から行政回収が始まったが、山上氏が近代協の理事長と大阪リサイクル事業協同組合の当時の代表理事として関与した3市では業が成り立つ適正な価格で入札が行われている。同氏は「適正な入札価格とはやはり、業として成り立つ範囲の上限・下限価格が保たれている」としている。
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2016年02月23日

「段ボール古紙急落」の実情 日本板紙組合連合会・北村光雄会長に聞く

北村光雄大和板紙会長h28.2.23.jpg 日経産業新聞の2月16日付け「段ボール古紙急落」の記事は、中国の古紙の買い渋りや為替の円高化で輸出が鈍ると、日本からの古紙の輸出価格が下落し、それが国内価格に波及、ひいては段ボール原紙など製品価格にも影響が懸念されるという想定で書かれている。このうち現実の事態の進行は「段古紙輸出価格の下落」までであり、「国内価格に波及」以下の事態とはなっていない。それが一見すると、国内の段ボール古紙市況が急落したかのように映るから、活字というのは怖い。この記事を読んだ板紙関連の業界関係者は皆困惑して、日本板紙組合連合会の北村光雄会長(大和板紙会長)に善処方を求めている。そこで北村会長に実情を尋ねた。

 回収コストと同じ段古紙価格

 中芯原紙や紙管原紙の主原料である段ボール古紙。国内メーカーの現在の購入価格は問屋店頭価格で1㌔あたり16-17円である。メーカーのいわゆる購入建値は北海道から九州まで問屋店頭15円(静岡のみメーカー着値で17円)で表示されているから、16-17円は実勢価格と言える。
 一方、段古紙の輸出価格は現在17-18円。昨年秋頃まで20円程だったから、当時と比べれば現在は国内価格と接近している。現在の輸出量は古紙全体で月約40万㌧、国内で回収される古紙の約10%を占めている。
 段原紙メーカーは、主原料の段古紙を16-17円で買っているわけだが、輸出向けと格差がある場合、古紙を供給する業者から絶えず価格を近づけるよう要請される。そこでプレミアム(割り増し)付きの価格が出てくるわけである。
 仮にプレミアムを付けて20円で購入した場合、コストは歩留まりを含め24円にもなる。これに抄賃約30円を上積めば、原紙コストは54円になり、せいぜい50円程度の中芯原紙売価ではコスト割れの現状は明らかだ。
 過去、古紙価格で国内価格と輸出価格は互いに関連し合い、需給間の思惑や駆け引きもあって上下動を繰り返したが、帰着するところは回収コストだったと言える。
 現状の段古紙価格は業界の古紙回収コストと同じである。輸出価格の下落の影響を多少受けるとしても僅かなものである。

 輸出古紙暴落時も買値16円を維持した

 中国など海外向けの輸出古紙価格が暴落したのは、リーマンショック直後の平成20年(2008年)11月。その頃の古紙輸出量は月約30万㌧前後で、国内古紙回収量の約15%だった。
 関東製紙原料直納商工組合の10月積みの中国向け輸出価格は段ボール古紙で1㌧あたり208㌦(CIF)だった。それが10月末に中国側が提示した価格は88㌦前後と一挙に100㌦台を割り込んだため、関東商組は輸出成約をストップした。
 為替も急激に円高が進行したため、古紙業者の手取り輸出価格も大きく値下がりした。CIF88㌦の古紙を1㌦=98円で輸出すると1㌔換算8.60円、これから海上フレートや輸出手数料を差し引くと、実に3.80円しか手元に残らないという惨憺たる状況だった。
 輸出価格と国内価格というのは互いに関係している。特に緊密な取引関係がある場合は別として、通常は値段の高い方に取引はシフトする。輸出向けが国内向けよりも高いと、古紙が輸出向けにシフトし、両者のバランスが悪くなる。それを防ぐために国内メーカーは買い建値にプレミアムを付けて、バランスを保とうとするのが通例である。
 当時は輸出価格の暴落によって、内外価格も逆転した。そこで出てきた考え方の中には、国内価格を輸出価格に近付けようというものもあった。具体的には当時、国内向けが20円だった段ボール古紙の購入価格を輸出並みの8-10円に合わせてはどうかというものだった。
 しかし、結果的にそうはならなかった。値下げが全くなかったわけではないが、輸出向けの業者手取りが3.80円だった時に、国内メーカーは段ボール古紙の購入価格として16円を維持した。
 これはなぜかというと、16円が国内古紙の回収コストでもあるからである。日本板紙組合連合会・北村会長は、「原料というのは額に汗をかいて働く人々(回収人)から集荷・直納問屋まで積算すれば、メーカー入りが大体15-17円なのだ」としている。
 もし、当時国内向けを輸出価格に近付けていたら、メーカーは一時的に大儲けができたかも知れないが、それは同時に古紙の回収システムを壊すことになるため、後々禍根を残すという良識的な判断が働いたのである。(川島)
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2015年03月07日

〈インタビュー〉古紙回収が過渡期に 5年もすれば大きな変化 山上春美・山上紙業会長

山上春美山上紙業会長h25.1.9.JPG 家庭や事業所から出る古紙の回収は、かつては巷の回収人から集荷業者の寄せ屋(関東方面では建場)を経てメーカー直納問屋に納められるのが普通だった。それが昭和48年(1973年)の第1次オイルショックの頃、トイレットペーパーの買い占め騒ぎから、ちり紙交換という新しい回収方式が流行った。地域の人々が時間と場所を決めて行う古紙の集団回収が大阪で始まったのは昭和55年(1980年)。周囲の反対を押し切って、この新しい回収を進めたのは山上春美・山上紙業会長だった。

 ちり交、集団回収が転期

 ――古紙の発生が慢性的に悪く、海外輸出も陰りが窺われます。
 山上会長 集団回収が大阪で始まった時、新しい回収方式を進めるにあたって周囲から猛反対されたが、反対を押し切って事を進めた。
 吹田市の清掃工場は昔の古い工場で、ごみを焼却すればキャパがないため、燃え残りを亀岡の山の中に棄てた。それが不法投棄で摘発された。
 何とかごみを減らそうということで、吹田市は最初ごみ処理を5分別で始めた。今では12分別ぐらいになっている。吹田市の当時の榎原一夫市長はごみの減量に困って、私に何とかしてくれないかというので、古紙のリサイクルを促進する集団回収を奨めた。
 ちり紙交換の普及と呼応して、吹田市のリサイクルセンターが立ち上げられ、選別ラインの整備など色んな拡充が行われた。
 ――ちり紙交換は新しい回収方式だったので、従来のやり方とは当初なじまなかったのではないですか。
 山上会長 再生資源といえば、戦後の混乱期に、くず物取締条例が再生資源取締条例になった。だから、不衛生な物を触った手で衛生用品としてのちり紙を扱うことが環境衛生上、好ましくないということで問題にされた。
 実際のちり紙は裸ではなく、ちゃんとビニール包装されていたから、不衛生だというのは屁理屈。ただ、それをしてはいけないと言われていたので、われわれ従来の回収をしていた者は立ち遅れた。
 当時の大本とか金本など韓国系のグループは全部それをやって、急成長した。兵庫が本拠地の大本はちり紙交換方式に反対していた大阪へ進出するのが遅れた。それで、私のところへ何とかしてほしいと手土産を持って頼みに来た。
 私は、「あなた方の意向に沿うようにしてあげる。しかしあまり無茶なことはしてはいけない」とクギを刺した。でも、最終的に彼らは、そういう注告を一切忘れてしまった。
 ちり紙交換は表向き不衛生ではないことをこじつけてやっていたが、もう既に時代遅れである。先取り、抜き取りなどタダで回収できるものが沢山あるので、そちらの方に走る者も多く、スピーカーを鳴らして走る者などもういない。
 先取りや抜き取りに対して、日本国内全ての自治体が条例などで法規制した場合、近い将来出来なくなるだろう。

 持ち去りは法規制で解消

 山上会長 ここで電子メディアの普及によって紙の消費が減ってくる。それと、インターネットで全部ニュースが読める時代が来れば、まだまだ紙は減るだろう。だから、今の紙の生産や古紙の回収は5年もすれば大きな変化が到来すると思う。
 全てのものが変わってくる。その時代を先取りしなければいけないのが今だ。回収エリアも相当変わってくるだろう。回収方法、システムが変わってくるから。
 今、中国を中心とした東南アジア諸国に、日本国内で回収され、余剰となっている400万㌧が全て輸出され、昔と比べれば古紙業界は天国のように思われているが、そのような状態がいつまでも続くわけではない。

 古紙回収の新方式開拓を

 山上会長 輸出が減ってきて、国内で余った時にどうなるか、5、6年先にはそのような時代が来るだろう。回収システムや方法が変わってくれば、利益が今までどおり取れなくなる。それを何とか存続して、生き残ろうと思えば、今のうちに、新しいかたちのものをしなければならないということ。
 ――かねて懸念されている2015年問題のその年になりました。
 山上会長 中国の古紙の回収率は46%だという。本当か嘘か分からないけれど。中国で46%集まっているということは、中国で生産した紙の数字から算出しているわけだから、生産されて箱となり、海外へ出て行くものがどれだけあるか、それを回収率の中に含めているか、いないかで大きな誤差が出る。紙の生産量が分かっていても、箱となって海外に出たものは分からない。それを差し引いた上の回収率でなければいけない。
 ――中国の出している数字は信用できないとよく言われる。
 山上会長 それはそうだ。何でもありの国柄だから。中国で箱となって、日本やアメリカへどんどん出荷していた場合、その数字を回収率の中に含めて46%だったら、含めないで計算すれば50何%になるのではないか。
 日本でも古紙の回収率は64-65%であり、自国で生産した数字を基にしていて、海外から入ってきた箱がどれほどか分からない。しかし、日本の場合、回収率が高いというのは間違いない。
posted by 川 at 09:19| Comment(0) | インタビュー | 更新情報をチェックする